皆さんは「干し数の子」をご存じですか?
昭和時代の戦後ちょっとまでお節料理の数の子は「干した(乾燥した)数の子」を使うことが当たり前でした。
それが高度経済成長期頃に塩数の子の生産が激増し流通が増えたのと、その扱いが簡易なことも相まって「干し数の子」と塩数の子の扱い数が逆転しました。
塩数の子の扱いが簡易というのは、料理をしたことがある方ならお分かりだと思いますが、水で一晩戻して薄皮を剥がせば直ぐに使える(食べられる)状態になります。
しかし「干し数の子」は塩水やお米の研ぎ汁に漬けて一週間以上、しかも研ぎ汁は毎日替えます。
(昔は今ほどパン食などは無かったようで基本お米を炊いて食べていたとのことです。)
そして一週間ほど経った頃から薄皮を取っていくのですが、これが物凄く大変で、手間で、面倒なのです(苦笑)
少しでも薄皮が残っていると食べた時に口の中で非常に不快な思いをしてしまうので、慎重に丁寧に取り除かなければなりません。
こうして一週間以上かけて、しかもとても手間の掛かる作業をしてようやく使える(食べられる)状態になります。
大変手間は掛かりますが、数の子としての歯ごたえや食感等は塩数の子の比ではありません。
かの食通と言われた北大路魯山人をして「数の子は音を食うものなり」と言わしめました。「干し数の子」はそれを実感できるのです。
弊店では、昔ながらの戻し方を踏襲し、毎日研ぐ米のとぎ汁で戻し、慎重かつ丁寧に薄皮を取り除き、漸く食べられるようになったものを秘伝の漬け汁に漬け込み、そして握りをご提供します。
握りでは、お客様にお出しする直前にその場で削る削り節を少々振りかけます。
味は付いているので、そのまま召し上がっていただきます。
是非お試し下さい。