明治36年(1903年)創業の正統江戸前寿司屋です。

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生ウニを食べるようになったのはいつから?北海道では代わりに○○○を食べるようになった!?

生ウニを食べるようになったのはいつから?北海道では代わりに○○○を食べるようになった!?

このお話は、まだ魚河岸が築地にあった頃のお話しです。
顔馴染みの仲卸の親父さんがちょいと余裕があるときに(筆者である私が買い付けに行っているわけですが、それでも余りあくせくせず余裕があったとき)面白い話をしてくれました。

《この話は仲卸の親父さんが語ってくれたので、一部正確ではない、間違ったことを言っているかもしれません、ご了承ください》

「今、生のウニが当たり前に入ってくるけど昔は無かったんだよ」
“あ~、なんか聞いたことありますねぇ”

「あっても練りウニっていうか、瓶詰のウニばかりでね、で、どうやって生のウニが入るようになったか知ってるかい?」
“さぁ~・・・そこまでは親父から聞いてないですね。
魚が貨物列車で運ばれてきて市場に着くと貨物車の扉が開く、すると中に入っていた氷がざぁーっと出てきた・・・
なんてのは聞いてますが”

「うんそうそう、それは普通の鮮魚だね、まだ当時はトラック輸送よりも貨物列車が多かったからね、でウニのはなしだけど・・・」
“へぇ、どんなで?”

「昔鉄道は国鉄だったでしょ?」
“はい”

「で、当時国鉄職員は定年退職すると退職金というか、年金みたいな感じで無料で定期券みたいな日本全国どこまでも、どの線でも使える通行証がもらえたんだよ。
もちろん鈍行しか乗れないんだけどね、それを使ってうまく商売始めたんだよね」
“へぇ~、すごいですね~!で、どんな商売ですか?”

「ウニよ。
当時東京には入っていなかった生ウニを北海道で定年迎えた元国鉄職員が退職金を元手にウニを買い付けて、件の通行証を使って夜行で東京まで、即ち築地まで来る。
そこで持ってきた生ウニを売りさばく・・・
で、また今度はウニを売った金であるものを仕入れて北海道に帰るんだけど何を買って帰ったと思う?」
“え~?なんだろ・・・魚・・・ではないですよね?”

「ちがうねぇ。ヒントは当時北海道には無かった果物だ」
“果物?・・・なんだろ・・・みかん?は昔から北海道に流通してましたかね・・・う~ん”

「わからんか?」
“時代的に珍しい果物ですか?”

「まぁそうだわな」
“だめだ、わかんねぇ、降参します”

「ふはは(笑)、答えはなバナナだよ」
“バナナ!!??バナナっすか???”

「そう、ウニを売った金で今度はバナナを仕入れて・・・
築地だもの青果もあるだろ?
そんでもって今度はそのバナナを北海道で売りさばく。
そしてまたバナナを売った金でウニを仕入れて・・・
というのを繰り返して大儲けしたってわけだ。
当時、北海道にはバナナが入らなかったからね大人気だったらしいよ」
“ふぇ~・・・すごいですねぇ~”

「もちろん今はそんなことしていないし、できないだろうからね」
“でもそれから、生ウニの味が広まっていったってことですよね?”

「そうだねぇ」
“いや、大変勉強になりました。
他にも似たような話ない?”

「あるよ(笑)それはまた今度にしよう。
ほらあんたもそろそろ帰んないと、仕事間に合わなくなるよ」
“あ!そうだった!親父さんありがとうね、また来ます!”

以上の会話がありました。
時代的には昭和30年代と思われます。

この話をしてくれた仲卸は既に廃業しており、親父さんの所在も不明です。
しかしながら昔の築地をしっていて昔話をしてくれる貴重な親父さんでした。

もちろん、今現在もそういった話の出来る年配の仲卸は沢山いらっしゃるとは思いますが、筆者がそういった方々と出会えて似たような話を聞ける機会はそうそう訪れないでしょう。

この他にも築地小話はありますが、それはまたの機会にしましょう。