ある日弊店のHPから予約が入りました。
初めてお見受けするお名前で、登録された電話番号から察するにかなり遠方から来てくださる様子でした。
しかも来店予定日よりも随分早くご予約いただいてました。
その日が来ます。
ご夫婦でした。
普通に席に着かれてご注文いただき、静かに会話をしながら召し上がっていました。
そろそろお食事も終わるのかな?と思っていた矢先、やおらご主人が
「実はこの記事、これを見ていつか必ず行ってみたい、そう思って18年かかりました。今日は美味しいお鮨をありがとうございました。」
そう言って一枚の雑誌の切り抜きを見せてくれました。
それはその昔取材を受けた雑誌でした。
この雑誌を見て、弊店の記事を読んで、来てみたいと思って頂けて、それをずっと思い続けて18年経っても忘れずにいてくれて・・・そしてご来店頂ける。
こんなに嬉しいことはありません。
見せてくれた記事をみると懐かしさがこみ上げてきます。
鮨の写真には“ジンタ”が入っていますので夏に撮ったものとわかります。
記事の文の中に“ガリ”の話も出てきて、その時の取材風景が思いだされました。
ちょっと調子の良い(悪い意味で)初老のインタビュアーの方で、校正文章も確認もできず発売された雑誌でした。
間違っている箇所がいくつもあり、先代と苦笑いしたものでした。
雑誌や本というものはいつまでも残るので今回のように切り抜いて大事に持っている方が意外と多いです。
週刊誌に掲載された記事を丁寧に折りたたみ、財布の中にいれていたものを出されて
「この記事を見て来たいと思っていた、定年を迎えてやっと自由になったので来れた」
というお話をしてくださる方、
昔流行ったグルメガイドの本に蛍光ペンでラインを引いたのを見せてくれて
「気になった店にはこうしてマーカーをしておいて、その店に行ったらちょっとした感想を書くんだよ」
なんてお話しくださる方もいました。
今の時代だったらSNSで投稿とかするんでしょうね。
今回は18年越しのご来店を果たされたお客様の話題でしたが、弊店のご常連に
「うちに来るきっかけはなんでしたか?」
とお聞きすると中々面白いお話が聞けます。
でもそれはまた別の機会に。
今回はこれにて・・・。