弊店の長い歴史の中では「〇月は・・魚」と言う取り扱う魚の季節を明確に判断する基準があります。
現在もその基準を念頭に魚河岸へ買い出しに行っています。
しかしながら、昨今の魚河岸に並ぶ魚達を見るに、季節や獲れる場所が大きく変わっていると感じます。
10年以上前から「初鰹」は2月位から出回り始め、【目に青葉 山ホトトギス 初鰹】などと言われた時代からは随分と早く手に入るようになっています。
また、季節が早まって出回るばかりではなく獲れる場所も大きく変わっていますね。
例えば、冬の魚である「鰤」は富山県の氷見で獲れるものが最上等と言われてきましたが、ここ数年は北海道で上がることがほとんどだそうです。
その他にも「トラフグ」が山口県ではなく秋田県で上がったり、西の魚である鰆が山形県で獲れたりするそうです。
これらは全て温暖化の影響ではないかと考えております。
サンマが獲れなくなったのも海水温が高くなったため、冷たい温度を好むサンマが北上してしまったというのも有名な事象でしょう。
この様に魚の季節(旬)がズレてしまったり、獲れる場所が変わってしまうと弊店のような昔から語り継がれてきた情報が全く役に立たなくなるのです。
季節感の無い、年がら年中鯖や小肌、赤貝等を使う寿司屋さんには関係ない事でしょうが、弊店にとっては死活問題です。
事実、今シーズン(令和6年)の「麦イカ」(当コラム旬の魚を参照)を買い損ねています。
買い出しに行く私自身が4月初めに麦イカを見たときに「まだ早いよな?」と思いこみ、「まだまだ、これからこれから・・・」と考えているうちに麦イカの時期は終わってしまいました。
また、弊店の看板ネタである「ジンタ」も3月頃に「あれ?ジンタだよな?え?まだ3月なのに?早すぎるよね??」と買うのを躊躇してしまい(しかもその時のジンタは出場所がよかったのです。勿論様子も良かったです)、今年(令和6年)の大型連休明け(弊店の伝統に乗っ取って)に仕入れたものの、出場所は妥協せざるを得ず、サイズも心持ち大きめになっていました。
この様に温暖化の所為と決めつけるのは素人判断でよろしくないですが、如何せん弊店に脈々と伝わってきた魚の時期や獲れる場所の情報が役に立たないのは困ったものです。
これからももっと変わっていくと思われるので、今後は伝統のルールに囚われず、自分の目を信じて買うしかないのかもしれません。
余談ですが、昨年(令和5年)の5月位に魚河岸で「グルクン」という沖縄で有名な魚が魚河岸にありました。
グルクンを見たのは馴染みの店だったので「何よ、わざわざ沖縄から仕入れたの?」とからかい半分に言ったら「そんなわけあるか、競り場にあったから買ってみた」とのこと。
「ははwそりゃそうだ。ところで何処で上がったの?」と問うたら「三重県だよ」と・・・。
沖縄の魚が三重県で獲れる日が来るとは夢にも思いませんでした。
続けて「へぇ~、そんなら来年の今頃には東京湾でグルクンが獲れるかもね」と戯言を放ったら「そんなの勘弁だよっ!」と店の主人。
私も勘弁してほしいですね。
地球はどうなっていくのでしょう?温暖化は止まるのでしょうか?
日本の水産業はどのように変わっていくのでしょうか、そのうち天然魚など獲れなくなり、養殖魚はおろか培養魚などが当たり前になる時代がきてしまうのでしょうか・・・。
心配は尽きません。そうならないことを願うばかりです。