明治36年(1903年)創業の正統江戸前寿司屋です。

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ものの価値、食材の価値 「2025年の初競り」終わって、、

2025年の初競りも終わりようやく通常の日常が戻ってきました。
通常・・・とは申しましたが今年の初競りではなんとも言えない報道がされましたね。

大間産の本鮪が2億円以上の高値で競り落とされたり、函館産のウニが400gで700万円という桁違いの値段で取引されたという本来であれば言語道断な話です。

鮪の競り値に関しては数年前に3億と言う呆れるほどの値段で取引されたので、今年は史上二番目ということになります。

(築地から豊洲へ移転したのが2018年ですが、それ以前の2011年に鮪の初競りで3千万円を超え、2013年には1億円を超えました。
出典:https://business-textbooks.com/tuna-price/)

で、ウニですが・・・こちらは漆塗の箱に納められての値段なので、殆どが箱代ではないかと思います。


以前、まだ魚河岸が築地にあった頃、取引先の仲買の親父さんが
「鮪が一匹何千万とか、億を超えるとか・・・家が買えるじゃないの、実に馬鹿馬鹿しい、ものの価値と言うのはそんなもんじゃないんだよ」
と吐き捨てるように言っていたことを思い出します。

市場原理で「競り」なわけですから競り人が互いに譲らず値段が吊り上がっていくことはままありますが、限度と言うものが普通はあってある程度でどちらかが折れて値段が決まります。

祖父の代から取引をしている鮪卸の社長は
「もうあれ(一番鮪の競り)は初競りの見世物(ショウ)になっていて、あれを我々は遠巻きに見ているんです。
で、終わると『さぁショウは終わった、本当の競りを始めようか』なんてアメリカ映画で出て来そうなセリフを吐いて通常の競りを始めるんですよ」
と打ち明けてくれました。

昔から初競りの価格がその年の相場を決めると言われるくらいなので、余りにも桁違いの競り値がつくとその年はそれが基準となってしまうわけです。

しかし、そんな何億という値が基準になることはあり得ないので“ショウ”と言われてしまうのですね。

世の中には「高ければ美味しい」と思う方が一部存在することは存じておりますが、ものの価値を勘違いしてはならないですね。

今年のウニに関しても漆塗の箱に入れる意味が理解できません。
江戸時代の将軍様に献上するためや明治憲法下の天皇陛下に献上するためなどでしたら
未だ分かります・・・が、ウニは普段一枚(一箱)5万円を超えることはめったにありません。
一時10万という値が付いて市場内がざわついていたことがあったくらいです。

今回の700万(恐らくウニ二枚でその値段ですね、ですから一枚350万だと推測されます)のウニの味に大差は無いのです。
というか鮪もウニも食べ物なので食材にその様な高値をつけてはいけないということですね。


(ご祝儀相場はあるとしても)“初競り”という本来あるべき伝統的な振る舞いに対して、メディアと超高額で落とす店が、純粋に食材の仕入れの為ではなく「広告や、他の目的」のために利用している状況に苦言を呈するのです。

ものの価値、とても大事な感覚だと思います。
メディアが報道しなければ、本来の伝統的な初競りに戻ると思います。

消費者の方たちもメディアをご覧になって、高額な初物を食べることで成り立っているとは思いますけどね。
初競りのものを○○万円で食べると「幸せになる」「縁起がいい」色々な思いがあるかもしれませんが、あらゆる意味で騙されないでくださいね(笑)(あくまでも個人的意見です)

改めてですが(誰が何をやろうと自由ですので、批判というよりも)苦言を呈しており、メディアを使った過熱した『ショウ』から、以前の初競りの姿に戻ってほしいという願いがあります。