弊店には数多くのご常連様がおられます。
北は北海道から南は沖縄まで、東京に来るたびに弊店へお立ち寄りくださいます。
本当にありがたく、嬉しいことです。
ある方は「この店の〆魚食べたら地元の鮨屋で光物食えなくなった、責任取れ(笑)」などと言ってくださいます。
実に鮨屋冥利につきます。
また別の方は「どうにも地元の魚・・・というか鮨屋で美味い店が無くて・・・回転寿司はあるけれどそういうのじゃなくて・・・本物を食べたいと思うとこちらしかないよね」と、これまた嬉しくて昇天しちまうようなことをおっしゃってくださいます。
またまた別の方は、弊店が改修工事で8か月ほどお休みいただいた後にご来店になって「こちらが工事中に人に誘われて(仕方なく)行った鮨屋はいくつかあるけど、自ら行こうと思って食べに行った鮨屋は無かったよ、《余人をもって代えがたし》とはよく言うけれど、こちらの店は余店をもって・・・だね」と更に更に嬉しいことを仰ってくださいました。
本当にお客様に恵まれており幸せな店だと痛感いたします。
こういった方々に支えられていると肝に銘じながら、日々精進して参りたいと考えております。
さて、そんなご常連のなかに外国の方がいらっしゃいます。
外国といっても身近なアジアの方ではなく、遠い遠いニュージーランドから来てくださる若いご夫婦です。
初めの出会い、きっかけは本当に他愛もない偶然のことでした。
ある日ふらりと予約もせずに若い外国人カップルが来店しました。
その時店の中は、ご常連ばかりで店主である私は英語なんて話せません、注文の仕方が分からずに困っているところをご常連のお一人が英語で声をかけて弊店の特徴とお薦めの握り(当時は並握り)を紹介してくださり、その通りに注文してくださいました。
そのうち見ているとなんだか男性の方がもじもじしています、どうやら食べ足りない様子。
そうしたらすかさず別のご常連が「三つ葉巻きを一本巻いてあのカップルに。もちろん値段は僕に付けてね」と言って若い外国人カップルにご馳走してくださいました。
更に別のご常連が「んじゃ俺はお酒をご馳走しよう、大将お酒一本つけてあちらへ・・・勿論お代はこちらにつけるんだよ?」と。
そういったご馳走合戦が行われている間これまた別のご常連は語学の先生で英国で過ごされていたとのことで英語ペラペラな方でして、この方がカップルが困らないように飽きないように常に気を使いながら話しかけてくださって場の雰囲気を和ましてくださってました。
真にご常連様に助けられた一夜でした。
こうしてその外国人カップルは色々とご馳走してもらい、洒脱な会話もできて(筆者は一言も話してません(苦笑)店を後にしました。
彼らが払ったお代は並握り一人前と追加少々というとても軽微な支払いとなりました。
このことは筆者の記憶に強く残る出来事だったのですが、数か月後に訪れる衝撃につながるとは夢にも思いませんでした。
ある日弊店のHPの予約フォームから予約が入りました・・・が、どうやら外国の方からのご予約でした。
しかも人数が6名という弊店としては大人数でのご予約。
一抹の不安を抱えながら「この店は6名は難しい、しかも鮨しか出せない店だ、その辺理解したうえで予約してくれたのか」というような確認のメールをおくりました。
すると返信がきて「大丈夫大丈夫。以前利用したんだ。その時マスターは一生懸命図鑑を使って魚の説明をしてくれたじゃないか、今回は妻と僕の両親を連れて行くから、よろしくね」という内容のメールでした。
あれ?図鑑を使って説明?あれれ?もしかして以前来たニュージーランドのカップル???と記憶が繋がり、それならばということで予約をお受けしました。
ご来店当日、身体の大きな親御さんを連れた若い夫婦がやってきて「おぉ!やはりあの時の!」という再開にいたったのです。
その時もお決まり(上握り)を食べていただきましたが、やはり足らなかったようでもう一度同じものを注文なさるので、こちらとしてもそれではつまらないだろうと思い、内容が変わる並握りを人数分作りました。
大変満足いただけたようで弊店といたしましても胸をなでおろす結果となりました。
それから数年・・・これまた弊店HPの予約フォームに外国名でのご予約が・・・。
「ん?あれ?この名前見たことあるな・・・」と思いながら今回は二名でのご予約なので、通常通りお受けして当日をお待ちしてました。
いよいよご来店の時を迎え、いざ席に着いてわざわざ来ていただいたことを御礼申し上げていると「もう三回目なんだけど」と言うではありませんか。
「あ!あの時の!!」(因みに筆者は物覚えがすこぶる悪く、特にお客様の顔を覚えられないのでとても困っています)そういうと外国人カップルはにやりと笑いました。
遠い国から何度も訪れて頂けることに心の底から感謝しました。
我々日本人でも外国旅行先の飲食店に再訪することはめったにないでしょう。
日本国内ですら再訪は難しいと思われます。
それが外国の方が何度も何度も訪れてくださる、これほどうれしいことはありません。
思わず「あなた方お二人は弊店のご常連です。外国の方がこんなに何度も利用してくださることはとても珍しい事です」と伝える(勿論スマートフォンの翻訳機能を使った会話です)と、先方も「ここの鮨が気に入っている。とても美味しい」と言ってくださいました。
外国にも弊店のファンが居てくださると思うと身震いがいたします。
このほかにもロシアから来てくださった兄弟。
初めはやはりふらりとご来店くださいました。
日本語を学んでいるとかで帰り際には「ドモアリガトゴザマシタ」とたどたどしい日本語であいさつしてくれました。
その兄弟が二年後にまた来てくれたのです。
思わず筆者も「二回目ですよね?」と喜びの声を上げてしまいました。
するとその兄弟はそっと一冊の本を差し出します。
日本語で書かれていますが、明らかにロシアで発行されているロシア料理の本だったのです。
わざわざ二回目の弊店に手土産として持ってきてくれたのです。
この時も大変嬉しくありがたく、背中に羽が生えて飛び上がるような気持ちになりました。
初回から二年後に再訪してくださったので、次も二年後?と期待しました。
何故なら丁度東京オリンピックの年だったからです。
しかしながら、コロナ禍に見舞われオリンピックは延期、国際的な移動も制限されたと記憶しておりますが、そのロシア兄弟は弊店に見えませんでした。
仕方のない事です。
そのうちロシアが、ウクライナへ侵攻を始めてしまいました、その時すぐさま「あの兄弟は無事だろうか?徴兵されてないだろうか?何年後になっても構わないからまた元気な姿で二人そろって来てくれるだろうか・・・」様々な思いが巡りました。
兄弟の無事を祈ります。
地元を始めとする国内日本人のご常連様は基より、海外にもご常連として弊店を良く思って下さるお客様がいることに感激いたします。
それもこれも初代からの鮨に対する姿勢と軸のぶれない堅実な仕事が、着実に受け継がれてきたことが日本人のみならず外国の方にもわかって頂けたのだと思います。
今後も江戸前の心意気と仕事を曲げずに真摯に愚直に行って参る所存です。