明治36年(1903年)創業の正統江戸前寿司屋です。

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旬のネタ

期間限定ネタについて

弊店では、旬のネタでも特に取り扱い期間の短いネタは、「期間限定ネタ」として提供させていただいております。
過去弊店では、期間限定ネタは、最短で一週間しかやりませんでした。
何故なら、やたらと手間が掛かっていたためです。(先代時代は「やたらと手間」を敬遠したためです。)
今は1か月間、月間ネタとしてご提供しております。
手間はかかりますが、一週間ではご常連様も口にできないことが多かったため、当代になってからは期間を延ばしております。

白魚

3月は「白魚」です。
白魚は、生で食するのは当然ですが、そこは江戸前鮨として「仕事」を施したネタを用意いたします。
日本酒と砂糖で甘く煮漬けた白魚にしますが、真っ直ぐに煮上げるのが苦労どころです。
握るときは芝エビのオボロをかませて握ります。
そうすると白く煮あがった白魚の間から桃色のオボロが垣間見えて、とても美しく可愛らしい握り姿となります。


貝類

貝類は、基本的に「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われております。
しかしながら、昨今の気候変動の影響か 9月の彼岸になっても貝は育っておらず、実際に取り扱い始めるのは 11月に入ってからというのが現状です。
故に弊店では、遅くても春の彼岸を迎えたら徐々に貝類の取り扱いを止めていきます。
(4月に入っても貝を使い続けるのは、勝手ながら少々恥ずかしいことと受け止めています)

貝類は、上記の通り基本「冬」が季節で春には終わるのがほとんどですが、逆に春になってから取り扱い始める貝もあります。
それは、鳥貝と青柳です。
春の彼岸を迎える辺りから、鳥貝青柳の季節が始ります。
(因みに「小柱」というのは青柳の貝柱のことです。
こちらも珍味で大変人気があります。)

鳥貝と青柳は、5月初旬(ゴールデンウイークの頃)まで取り扱いを行っております。
4月の「期間限定ネタ」として取り扱っているネタです。
・・・が!! ここ数年、春の貝である鳥貝や青柳の出始まりが異様に早く、2月に入って直ぐ魚河岸で見るようになりました。
ということは終わりが早まるという事です。
こういったことから 2024年現在の海の状況は、今までの様にはならないと考えております。
旬のネタを提供する側(取り扱いを始める、止めることを判断する側)として、非常にやり辛い状況です。


6月は「鮎」です。
鮎を酢〆にして姿で握ります。
こちらも大変手間がかかりますが、伝統を無くしたくないので粛々と続けております。
寿司職人として「カスゴ」を仕込めれば一人前・・・と言われますが、私に言わせれば鮎の方が数段手間がかかるので、鮎の〆が上手に仕込めれば真の一人前ではないかと思います。


松茸

10月は「松茸」です。
独自の漬け汁に漬け込んだ松茸を注文を受けてから握る直前に軽く炙って香りが立ったものを握ります。
松茸の握りが江戸前鮨なのか?と言えば、江戸前鮨では無いですね。
弊店では昔から(少なくとも2代皛次の頃から)取り扱っております。
おそらく長い付き合いの魚河岸の八百屋に薦められたのでしょう。
季節のネタとして話題性はありますね。


干し数の子

12月と1月は「干し数の子」です。
現代では数の子と言えば“塩カズノコ”ですが、昭和時代前半までは数の子と言えば「干したもの」だったそうです。
カラカラに干された硬い数の子を米の研ぎ汁で一週間かけて柔らかく戻します。
その他の仕込みでは、魚卵特有の薄皮の被膜を丁寧にはがすことが一苦労です。
しかし、手間をかけた仕込みを行うと、咀嚼したときの歯ごたえといいますか感覚がとても良いものになります。


希少ネタ

以下のネタは、取り扱い期間の短いネタ「期間限定ネタ」と言えなくもないですが、仕入れが不安定なので「期間限定ネタ」にもできないのが実情です。
「希少ネタ」とは言いますが、本来の鮨屋では昔から当たり前に仕込まれていたネタです。
それが現代では扱う店がほとんどなくなってしまったので、「希少ネタ」になってしまいました。

ジンタ

ジンタとは鯵の新子(稚魚)のことを言います。
鮨ネタで「新子」といえば小肌(コハダ)の稚魚を指しますが、他の魚にも稚魚はあります。
小肌の新子はやたらと持て囃されるのに対して、鯵の新子であるジンタは注目されません。
しかしながら(持論ではありますが)味はジンタの方が数倍美味しいのです。
魚を横向きに握るのはジンタだけです。

ジンタは、大変手間がかかるので(小さくて身も柔らかい上に体側の“ぜいごけ”と呼ばれる固いうろこを上手にこそげ取らねばならないからです)現代の鮨屋では敬遠されているのでしょう。
(美味しいものでも)取り扱っている店が少なくなっており、残念でなりません。
「ジンタを知らずして鮨を語るなかれ」です。


麦イカ

麦イカとはスルメイカの稚魚です。
麦秋の時期に獲れるスルメイカの稚魚のことを呼びます。
(麦イカというイカの種類はありません)
通常鮨ネタとして新イカと言えば、夏から初秋頃に出始める甲イカの稚魚を指し、小肌の新子と共に大変珍重され高値で取引されています。

弊店では、スルメイカは煮イカとして煮漬けております。
一部では「イカは煮てしまうと固くなってしまうのに何故煮イカをやるのか?」と言う方がいる様ですが、これは麦イカ(の煮イカ)を食べた事がない方の発言ですね。
麦イカを煮イカにしたものはとても柔らかいのです。(美味しいのです)
この麦イカにすし飯を詰めたのが「印籠詰め」です。
麦イカを取り扱っている期間しかやらないので希少ネタです。

小肌の新子も新イカも柔らかさが身上であり、味はそれほど美味しいものではないですが、
鯵の新子であるジンタやスルメイカの新イカである麦イカは、柔らかいことは勿論、味もしっかりとあるのが特徴です。
これらのネタを知らず「鮨通」を気取るのは野暮の極みと言えるでしょう。

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